【レポート】トークイベント「ゲストハウスとまちとの関係」開催されました!

2025年1月31日金曜日の夜、時刻は19時30分。CLOSE後のKAKAMIGAHARA STANDに大勢の人たちが。彼らは思い思いのドリンクを手に、これから始まるトークイベントを心待ちにしています。

トークイベントのテーマは「ゲストハウスとまちとの関係」。

お話をしてくださるのは、岐阜県下呂市の山あいに移住し、「ソラノイエ 農村滞在型の宿」を運営する中桐 由起子さん。

実は由起子さん、各務原市のご出身。お父様の仕事の関係で一時はこの土地を離れましたが、中学・高校時代を再び各務原で過ごしました。その中学時代の同級生が、かかみがはら暮らし委員会の事務局を担い、2025年からはこのKAKAMIGAHARA STAND 事業マネージャーも務める津川 祐輔さん。

ある時、偶然お二人が再会し、互いの近況を話すうちにこのイベントを開催することに。

さらに、各務原市が今、最もまちづくりを推進している「那加公園エリア」において、現在まさしく “宿をつくっている” はらだ れいなさんが、由起子さんのお話を深掘りします。

宿をつくった人とつくりたい人が奏でるトーク。これはもう、聴く側も楽しみでしかありません。

縁ってどこで繋がっているかわからない!これって、すごいことですよね。

東京の大学で情報デザインを専攻し、CM制作会社に入社しましたが、仕事は激務の域を超える毎日。でも、伝える仕事は楽しかった、と由起子さん。

このままで人生良いのかな…と思い悩む日々の中で、突然起こった 3.11。

ある時、パーマカルチャーという思考に由起子さんは惹かれました。そこで生き方をリセットしたいと一念発起。2年間オーストラリア、ニュージーランドを放浪し、その暮らし方を体験。自然と寄り添い、今ここにあるものを生かし、栽培し、選択しながら生きていきたいと。

帰国後、社会貢献したい、田舎で暮らしたいという思いがますます強くなり、地域おこし協力隊で下呂市へ移住した由起子さん。

下呂市といっても温泉施設がそろった観光地ではなく、川の流れに合わせて築きあげられた、山に囲まれた集落です。スーパーは車で行くしかなく、移動販売車がやってくる山間地域。

(生活の上で)ギャップみたいなものはなかったですか?不便なこととか。

不便はウェルカム(笑)。田舎といっても同じ日本だし、住んでいた各務原もこの下呂も「岐阜県」は同じなのだから、そこまで変わらないだろうと。でもやはりバックグラウンドの違いなのか、生活スタイルとしてのギャップは大きかったかな。

ある程度はその環境、そのまちに染まらないといけない部分はあった?

染まることを期待されたというか、言葉を選ばなければ「閉鎖的」ではあるので、互いを認知するのに時間はかかりました。ただ、海外でも生活に順応できたから、なんとかなるだろうと。

下呂に決めたのは?

たまたま。震災後の移住ブームもあり、地域おこし協力隊の募集が下呂市であったから。当初、宿をやるつもりは全くなかったけれど、地域の人たちとかかわるのは楽しかった。

その地域に住まう人たちはすぐに受け入れてくれた?

地域の人は新しいものが怖い、関わるのが怖い、田舎は何もない!と思い込んでいるけれど、自信がないだけで誇りやプライドは持っている。コンビニや大きなスーパーが欲しいわけではなく、ただ、若い人がこの地の良さを知って来てくれたらと、漠然と思っている人たちが多いということはわかったかな。

農家さんはいるけれど、農業を教えてくれる人はいない。だったら地域の人を講師として招き、「子どもたちと農業体験をやりましょう!」とかかわりを増やしていったら、地域の課題への良い循環が見えてきた、と由起子さんは語ります。

社会と断絶したいわけではなく繋がってはいたい。この地で暮らしていくには?を考えたときに、できること、やりたいことが仕事になれば…という思いから、宿をやろうという思いにつながっていきました。

「宿」はこの集落でみつけた、緩やかな傾斜の屋根が特徴の100年以上経つ古民家。

白川郷などにみる背の高い合掌造りとは対照的な、益田(ました)造り(飛騨地方独自の建築様式)の大きな家。宿はひとりでつくり始めるのではなく、地域の人たちと共につくっていくことに。

ところで、そもそもゲストハウスってなんでしょう?

大まかにいえば、キッチン・リビング・お風呂などは共同で、バックパッカーたちが安く泊まれる宿をいいます。

そこには旅好きが集まり、情報交換や情報収集をするのですね。

宿としてリノベーションするうえで、地域の人には改築を勧められました。

「でも私はこのままがいい」「魅力発信の場にしたい」と、由起子さんは自身の思いを(吞みながら)伝えます。おそらくその熱意が伝わったのでしょうね。人件費はほぼかかることなく、地域・学生ボランティアを巻き込んでの作業。

地域の中にはあたりまえのように、大工さん、板金屋さん、左官屋さん、設備屋さんといったスペシャリストがたくさんいました。

山から木を切ってきてそのままウッドデッキを造ってくれるなど、たくさんの応援の力で2018年7月16日オープン。完成度50%くらいの状況で開業に踏み切りました。

コロナ禍もありましたよね。

他の仕事をしつつ乗り越えました。農業、ワーキングホリデーのマネジメント、地域の人から依頼されたチラシなどを作って情報発信のお手伝いや、大学での講師など。

ところで農村滞在型とは?

いわゆる宿泊施設とは差別化し、ここでの暮らしを体験してもらいたかった。ここで体験できる幅が広いので、やれるときにやれることをやってみようといったスタンス。たとえば、米、味噌、キムチ、たつけ(ズボンのような農作業着)などを作ってみる。あえて何と決めてしまわず、絶対にこれができるとも言わない。

自然に「自分たちでやってみよう」ができる環境。栽培して採って保存して食べてという「体験」ができる場でありたい。夕食もみんなで作り、食べ、コンポストで分解するなど、循環を意識した「使い捨てではない」生活。

田舎のおばあちゃんの家に来たような感覚? 

そう、歩ける範囲でも無限にやれることがある。だれかが来てくれることが重要だと思っています。

ふるさとワーキングホリデー参加者を受け入れ、繁忙期には誰かが来て手伝ってくれる。お客さんだけどスタッフ。若い人だけではなく、三世代が宿に集合し、また自分たちの生活に戻っていくことも。

学びの森で人気の らくだのパスタ をご主人と営むまなてぃさん、岐阜市から中津川市に移住し、林業を営んでいるお義兄さんからの質問を預かってきました。

地域の人たちとの精神的な距離を縮めるためにどうしましたか?

まずはお互いに不安なので、自身のことをオープンにするように心がけました。しつこいくらい積極的に声をかけてお話しして。すると少しずつ互いの考え方が理解できるように。

これからの日本に対する思いや祈り…みたいなものはありますか?

食料自給率がなくなってきていると感じます。もともとはあったはずなのに。自分の身体をつくる環境がなくなってしまっていくのが悲しい。自分に関わるものを自分でつくるという価値観が広がっていったらいいなと思っています。

ありがとうございます。ぜひ、まなてぃさんのお義兄さんのお話も聴いてみたいですね。

れいなさんも、これから実際に宿を運営するにあたり、気になることがたくさんあります。

大変なことは? 

とにかく洗濯(笑)。リネンサービスは無いし、日当たりも良くはない。コインランドリーも車で20分くらいかかるから行ってられない。

他には?

予約した人が、何時に来るのかわからない。できる時になるべく農作業をしていたいので。あとは草刈りかな。

現実的でとても大変な様子が目に浮かびます。

宿があることによって、地域の人が自ら宿泊客に話しかけている様子を見ると、閉鎖的な部分は減ってきている、何かしらの影響はあると感じる由起子さん。 

こうして田舎の面白さを発信しますが、「住んで」とは言いません。この地域や地域の人たちに魅力を感じ、「また来たい」と思ってくれたら。

関係人口が増えると良いな。 

今、改めてこの各務原に来てみてどうですか?

そもそも、各務原って「中途半端(笑)」で、東京から見れば田舎だし、下呂から見たらそれなりに都会で便利。でも、今こうして皆さんの活動を拝見してステキだと思った。たくさん刺激になったし、何よりもまず、このまちで暮らす人たちが楽しそう。

がんばって「まちおこししなきゃ!」というより、ただ好きなことをやっている人が多い。そしてその人たちを支えている人がいる。それも離れすぎず、くっつきすぎず。それぞれに特性があってオモシロいと感じました。

由起子さんの言葉どおりだな~と感じました。

なぜこのまちに魅力を感じるのか。それはこのまちで暮らす人が皆、楽しそうだから。そして、その楽しさを自身も味わいたいと願う気持ちが、またつぎの人たちを動かしているのでしょう。

それがいつのまにか「まちの魅力」に繋がっている。

ただ寝泊まりするだけではなく、ゲストハウスで楽しむことを目的とした旅がしたくなる。

そんな夜となりました。

ソラノイエ 農村滞在型の宿」岐阜県下呂市蛇之尾1345 春分の日あたりに宿泊再開します!

ゲストハウス ato」各務原市那加地区にて絶賛リノベーション中!オープンをお楽しみに!

photo by ぶんた/Bunta

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ふじい みな
今のおうちが気に入り各務原へ移住。暮らしを楽しむ会社員。 名古屋までの通勤は名鉄電車。毎朝聴くのはAMラジオ。

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